カウンセリングとは? 心療内科との違いは? 現役カウンセラーが徹底解説
- カウンセリング
はじめに
「カウンセリングとはなにか?」についてまとめたこの記事を読んでいる方の多くは、きっとなにかしらの悩みごとを抱えているのではないかと思います。私たちカウンセラーは、そのような悩みを抱える方々の話を聞く専門家です。
誰かにこの苦しい思いを聞いてもらいたい。そして、心にのしかかる重みを少しでも減らしたい。そう願う人は多くいます。一方で、カウンセリングってなにをやるんだろう? とか、カウンセラーってどんな人なんだろう? といったことはなかなかわからないですよね。
本記事では、カウンセリングとはなにか、カウンセラーとは何者か、心療内科や精神科とはなにが違うのかといった、カウンセリングにまつわる疑問にお答えしていきたいと思います。読み終えたあと、なにかしらのアクションを起こせるような、そんな記事になっていますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
解説:山藤奈穂子(臨床心理士/公認心理士)
カウンセリングとは何か?
カウンセリングとはなにかという問いに、私は「自分の心の“トリセツ”をつくる時間」というふうに答えています。絶対的に安全で安心できる環境のなかで、自分でも気づいていない答えにたどりつける時間。自分でも見つけられない本心に出会える場所。それがカウンセリングであり、答えを見つけるお手伝いをするのがカウンセラーの役割です。
普段、人間は自分の本心をすごく強く押さえつけて生きています。会社、家庭、学校など、その方のいる環境でうまくやっていくために、「こうしちゃだめ」「こう思っちゃだめ」「頑張らなくちゃいけない」というふうに。
なぜそのような無理をしてしまうのか、それは、そのように自分を押さえつけていないとひとりぼっちになる、嫌われる、食べていけなくなる、大学に行けなくなる、いい会社に就職できなくなる……といった恐怖を抱えているから。
その恐怖に打ち勝つために、自分を押さえつけ、ときに自分自身を否定しながら生きているんです。もちろん、それは社会で生きていくために必要なことでもあります。ただ、その自分を押さえつける力があまりにも強すぎてしまったり、環境そのものが良くないのに、無理やり自分の本心を押さえつけてしまうと、やがて心身に不調が出てきます。
生活に支障をきたすほどではないし仕事にも行けているけど、いつも辛い。結婚してお子さんもいらっしゃる方なら、家事も育児も毎日こなしているけど、いつも苦しい。ふとした瞬間に過去のトラウマがよみがえってしまう。自分はこれでいいのかと深く悩んでしまう。
では、どうすればいいのか? 冒頭で申し上げたように、そのようなつらく・苦しい悩みに対して答えを出すお手伝いをするのがカウンセリングなのです。
カウンセリングの中身とカウンセラーの役割
では、カウンセリングの場ではどのようなことが行われるのでしょうか。カウンセラーが行うのは、徹底的に「聞く」ということです。
カウンセリングの場では、心理的安全性が100%確保されます。守秘義務があるため秘密が絶対的に保持されるのは当然のこととして、なにを言っても絶対に怒られない、絶対に否定されない、絶対に笑われもせず、説教もされません。なにを言っても否定されないという環境(実は、日常生活ではそのような場はほとんどありません)のなかで、自分でも気づいていなかった答えを見つけられるのが、カウンセリング。その答えを見つけられるための適切な手伝いをするための専門の知識と経験を有しているのが、カウンセラーです。
カウンセラーというと、悩みを聞いて、「それならこういうふうに考えてみて!」「こういうふうにしてみるのがいい!」と答えを出してくれる存在だと思われがちなのですが、実はそうではありません。たとえば結婚生活に悩んでいる人に「離婚しちゃいましょう!」というのはカウンセラーの役割ではないんです。
人間は原則的に未来志向です。より良い状態になることをつねに求めている。そして、その状態に自分がいない場合、その状態に辿り着けそうにない場合に違和感や不調を覚えるのです。そして、意外に思えるかもしれませんが、現状を打破するための答えはすでに無意識に自分の中にある場合がほとんど。すでに申し上げたように、その本心を強く押さえつけているから、自分でも本心がわからなくなってしまっているんです。
その本心は、「そう思ってはいけない」「そんな答えを出したら怒られるに違いない」というものかもしれません。カウンセリングを通じて本心にたどり着くことができれば「そう思ってもいいんだ」と自分を許すこともできるんです。
本心に辿り着けば、それがすべて正解というわけではありません。会社がストレス減だからと会社を辞めたら、次はお金がなくて苦しむのでは困ってしまいますよね。本心のままに生きればそれでオッケー! というほど世の中は単純ではありませんが、自分の本心を知ることで今の環境に耐えるための力が湧いてきたりもするものです。納得がいかずに我慢させられるのと、納得した上で我慢するのでは、やはり大違いなのです。
もちろん、カウンセリングを終えて「会社を辞める」とか「離婚する」といった重い決断をする勇気が出るケースもあります。どちらの答えになるかは当然ながら人それぞれですが、答えはすでに心の中に存在していることが多く、私たちカウンセラーはそこにたどり着くためのコーチのような役割を担います。
1回のカウンセリングで本心にたどり着けるケースもあれば、複数回のカウンセリングを経て、ということもありますが、理想のカウンセリングとは、終わったときに「Feel Right(納得する、しっくりくる)」の感覚があり、「これでいいんだ!」と思えるものです。
病院に行くか、カウンセリングに行くか
さて、心に悩みを抱えていて、心身に不調がある。そのときにカウンセリングのほかに選択肢に挙がるのは心療内科、精神科などの医療機関ではないでしょうか。カウンセリングを受けるべきか、医療機関を受診すべきかも悩ましいところだと思います。
カウンセラーと医師で大きく異なる点はふたつ。保険適用か否かと、お薬を出せるか否かです。カウンセリングは保険が適用されず、カウンセラーはお薬を出すことができません。保険適用でお薬が出せるのが心療内科・精神科です。
その上で、カウンセリングと医療機関、どちらのドアをノックすべきなのでしょうか。私は、「2週間以上寝られない」「死にたいと感じる」「仕事に行くことができない」「仕事には行けるが、毎日2時間以上遅刻してしまう」といった場合は、医療機関を受診することを勧めています。
このような状態は、いわば心が骨折した状態。骨折したらお医者さんに行って、手術をするなりギプスをしないと治りませんよね。そのような医療行為が必要な状態であれば病院に行くべきであり、その基準が上で挙げたような状態になります。
それでも、どちらが良いかどうしてもわからない! ということもあるかと思います。ですので、カウンセラーは医療機関と連携し、医療行為が必要と判断した場合は紹介状を書いて医療につなぎます。
少し余談となりますが、心療内科や精神科を受診する際は、精神保健指定医がいるクリニックかどうかが判断基準になります。精神保健指定医は3年以上精神障害の判断または治療に従事した経験を有するなど複数の項目に該当した医師だけがなれるもので、向精神薬や急性精神病(急性一過性精神病性障害)の薬など、取り扱いの難しい薬を扱うのに長けている場合が多いからです。
信頼できるカウンセラーとは
ここまでカウンセラーという言葉を何度も使ってきましたが、実はカウンセラーという国家資格はありません。そのため、誰でもカウンセラーを名乗ることができてしまうのも事実です。無資格の「○○カウンセラー」の元を訪ね、「私の経験はこうだった、あなたもそうしなさい!」と個人の経験を押し付けられたり批判されたりして、かえってボロボロになってしまうといったことも残念ながらよくあります。無資格のカウンセラーに頼るのは、まったくおすすめできません。
カウンセリングに関する資格は、民間資格の臨床心理士と、国家資格の公認心理士。相談するならいずれかの資格の保持者であることが条件。Wで所持していれば、もっとも信頼できると判断できます。
カウンセリングに行ってかえってダメージを受けてしまっては本末転倒の極みです。カウンセリングを受けるなら、臨床心理士か公認心理士いずれか、できれば両方の資格を持つカウンセラーを選ぶのがおすすめです。
ぶどう園にカウンセリングルームを開いた理由
私はいま、富山県富山市の「やまふじぶどう園/ホーライサンワイナリー」の中にカウンセリングルームを開設しています。やまふじぶどう園は私の実家でもあるわけですが、小高い丘の上にあり、手前味噌ながらすごく気分のいい場所です。
ある論文によれば、ビルの一室で心理療法を行うのと、緑の中で心理療法を行うのでは、効果が4割くらい違うと言われています。ただ、私の肌感覚でいえば、ちょっと大げさすぎるかもしれませんが「4倍」と言ってもいいくらいの違いがあると思います。
とくに県外の都会から来る方からすると、この場所に来るだけで気分転換になりますし、「来るだけで癒されました」と言っていただくこともあります。ですので、この場所でのカウンセリングは私にとってはラク(笑)。ワイナリーの環境そのものが“仕事”をしてくれるので、私はなにもしなくてもいい……ということはありませんが、この場所が非常に心理療法をする上で効果的な場所であることは間違いないと思っています。
ちなみに一度カウンセリングに来た方に「次はいついつに来てください」と言うことはありません。1回でスッキリできればそれがベストですし、何回か集中的に来てもいいし、ひと月とか3か月に一度、定期的に来るのでもいい。私はいわば心のコンサルタントですから、来たくなったときに来る、なにかあったら来るでいいのです。
心が苦しいと感じた時は、富山のぶどう園で、いつでもお待ちしています。
問い合わせ、ご予約はこちらから↓
法人向けに、社員のメンタルケアに関するコンサルテーションも行っています↓
山藤奈穂子プロフィール
富山県立富山高校卒業。お茶の水女子大学文教育学部教育学科心理学専攻卒業(人文科学学士)。在学中1年間アメリカ留学し、カリフォルニア州にてホスピス、精神保健センター、知的障害の子どものためのキャンプで心理臨床分野の研修を受ける。文教大学大学院人間科学研究科臨床心理学専攻修士課程修了(学術修士)。精神科クリニックで3年半常勤を勤めたのち、富山県スクールカウンセラーとして勤務しながら、精神科単科病院、真生会富山病院心療内科、国立病院機構北陸病院などでトレーニングを積む。臨床歴20年。現在は竹内スリープメンタルクリニックに所属(非常勤)。富山県いじめ対策推進委員。富山県公認心理師協会理事。日本うつ病学会第1回学会奨励賞受賞「受診しないうつ」。共編著に『こころのりんしょうa・la・carte 第26巻1号〈特集〉受診しないうつ』。