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ホーライサンワイナリー「スカーレット・ベイリー2018」テイスティングレポート

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ワインブロガー・ヒマワインがホーライサンワイナリーの「ほしあつめ2022」をテイスティングレポート! 果たしてその味わいは?(以下、文章はヒマワイン)

長期樽熟成マスカット・ベーリーAをワインブロガーが飲んでみた

富山県のホーライサンワイナリーから、ラベルのないワインが送られてきた。ボトルには直接テープが貼られており、「マスカット・ベーリーA 2018 タル」とマジックペンで書かれている。

 

2018年に収穫されたマスカット・ベーリーAを樽で長期熟成させたボトル、それが間もなくリリースの時を迎えるので飲んで感想を述べよというのがワイナリーからのオーダー。

さらに「抜栓から3日間くらいかけて飲んでほしい」とのことで、これはすなわち開けたては香りが閉じているから数日かけてワインを開かせながら飲むように、ということだと思われる。まるでブルゴーニュのちょっといいピノ・ノワールのように飲めというのが面白いじゃないの、と、2週間ほどワインを休ませた後、抜栓してみた。

 

スカーレット・ベイリー2018テイスティング【初日】

グラスに注いでみると、色はいちごジャムのようなやや茶色がかったルビー色で見た目にも熟成感がある。一方、香りはかなり控えめで、味わいもすっぱみ主体で果実は留守。でありながら、グラスの中の液体は高密度だ。

スカーレット・ベイリー2018

長期に寝かせたワインや、高いポテンシャルを秘めたワインは抜栓直後はうんともすんとも言わないことがよくあり、これをワインが「閉じている」なんて言ったりするが、このワインもまさに閉じまくり。というわけで一旦放置して別のワインを開けてしばし飲み、90分ほど経過したところで再び飲んでみて驚いた。

メモに残るのは
・もいだばかりを炭火に乗せた巨大原木しいたけ
・線香に火をつけた瞬間
・ドライクランベリー
・祖母秘蔵の紅茶
といった文言で、とくに「祖母秘蔵の紅茶」の意味が我ながらよくわからないのだがとにかく複雑でどこか懐かしさを伴う香りがグラスの深奥から立ち昇ってきていたことがわかる。

香りが開いてくるのに伴って、先ほどは留守だった果実味も出てくる。そうそう、これこれ。この時間の経過に伴う味わいの変化がいい熟成ワインを飲む楽しみなんですよ。

この時点でいくらでもグイグイ飲めちゃう味わい。だが、初日は1杯で我慢して、翌日以降の変化を楽しみにすることにした。

 

スカーレット・ベイリー2018テイスティング【2日目】

さて2日目だが、初日とはまったく別の表情を見せてきた。焙煎したてのコーヒーのような香ばしい香り、ウイスキーのようなアルコール感が出てきて、果実もバキバキに主張するいわばパワーフォルム。いや待ってこれマスカット・ベーリーAですよね? ベーリーAの線の細さはどこへやら、マッチョで男性的な印象に変化している。

ブラインドで出されたらクリュ・ボジョレーの熟成ガメイと答えると思う。モルゴンとかそういう感じなんですよ本当に。

肉はもちろん合うだろう。しかしそれではつまらない。味が濃く・強いものに合いそうなので、ノドグロの塩焼きとか、ややギャンブルだがホタルイカの沖漬けなんかも合わせたくなる、地元・富山の海の幸とマッチアップさせたい味わいだったのだった

 

スカーレット・ベイリー2018テイスティング【3日目】

迎えた3日目は初日の抜栓直後に感じた酸が戻ってきて、全体が穏やかになっている。太陽の季節を過ぎ、落ち葉の季節を迎えた森の印象で、昨日のガメイの印象からピノ・ノワールの印象へと変化しており、味わいとしては3日間で一番好み。

素直にジビエなんかに合わせるのが良さそう。ポークソテーに果物も一緒に煮込んだソースを合わせたりしたら相性MAXになりそうだ。うまいうまいと飲み干しそうになるものの、あと1日だけ変化を見たくなって、瓶底を1杯分だけ残しておいた。

 

スカーレット・ベイリー2018テイスティング【4日目】

さて、いよいよ最終日。3日目が紅葉の盛りだとしたら、4日目はまさに晩秋の風景を見せてくれている。酸、タンニン、アルコール、熟成感、果実……ワインのとがった部分はすべて丸くなり、グラスのなかで肩寄せ合って静かに調和している。

中国の山奥で遭難したところを助けてくれた仙人の家で出された異様に滋味深いスープを思わせる、しみじみおいしい味わいだ。こうして、最後の一滴もグラスから消えた。

 

スカーレット・ベイリー2018ついにリリース

初日の硬さ、2日目のパワー、3日目の落ち着き、4日目の調和……ボトルの中に四季があり、それを味わうような飲酒体験だったのだった。

いやしかし、おそるべしマスカット・ベーリーA。若いうちに飲み切るべき品種という先入観を抱いていたが、果実の状態次第では樽に負けずに長期の熟成にも耐えうることがよくわかった。

スカーレット・ベイリー2018

そして、この「マスカット・ベーリーA 2018」テイスティングがから数カ月後、このワインは「スカーレット・ベイリー2018」という名前でついにリリース。ホーライサンワイナリー/やまふじぶどう園のショップにて「裏メニュー」としてこっそり販売されているそうだ。マスカット・ベーリーAのポテンシャルを知りたい方、日本ワインの底力を知りたい方、そしてシンプルにおいしいワインを飲みたい方は、ぜひ当ワイナリーに足を運んでみていただきたい。