ホーライサンワイナリー「ときわすれ2019(黒ラベル)」テイスティングレポート
- ワイン
ときわすれ 2019はどんなワインか
「ときわすれ2019」を飲んだ。「ときわすれ」は自社畑のメルローをステンレスタンクで発酵・熟成させた、ピュアな果実味を楽しめる赤ワインのシリーズ。
なのだが、この「2019」は通常のものとラベルの雰囲気がちょっと異なる。聞けばこれは通称“黒ラベル”と呼ばれるシリーズで、通常ラベルより熟成期間の長いものに使用される特別ラベルなのだそうだ。
日本の場合、基本的には瓶詰めが終わったワインはすぐにリリースされることがほとんどだと思うが、ホーライサンワイナリー/やまふじぶどう園の場合、このようにボトリングした状態でしばらく置き、良きタイミングでリリースするということがままある。熟成した日本ワインを楽しみたいのなら、ホーライサンワイナリーをチェックするのがおすすめだ。(基本富山でしか買えないが……)
ホーライサンワイナリーはどのようにワインの熟成具合を見極めるのか
ではどうやってボトルに詰められたものの飲み頃を判断しているのか? という疑問が湧いてくるが、これは同ワイナリーの山藤智子社長と会話していると答えがすぐわかる。
「この間2019年のメルロー久しぶりに飲んだんだけど、すっごくおいしくなってたんだよね! そろそろリリースかな〜?」
こういった会話が、ワイナリー内ではどうやら日常的に交わされているのだ。
やまふじぶどう園というか、“山藤家”ではリリース前のワインが毎日の食卓に乗せられ、それを家族=スタッフで飲むのが当たり前。すなわち、ワインの状態チェック、品質チェックが生活の中に組み込まれている。そのため、なかなかつかむのが難しい熟成ワインの飲み頃が、手に取るようにわかってしまう。
「ときわすれ 2019」がなぜ2023年でなく2025年でなく、2024年の今リリースされたかといえば、実際に飲んで「今だ!」と感じたからにほかならない。飲みごろを迎えた、まさにそのタイミングを逃さずリリースされた、「ときわすれ2019」は幸せなワインだ。
ときわすれ 2019を飲んでみた
以上は、実は私自身が飲んで感じたことでもある。メルローは大好きな品種で、その魅力はなんといっても「柔らかさ」にあると私は思う。一方で、若いうちのメルローはやや硬さが目立ち、味わいにおいては酸味も渋みもときに強くなりがちだ。
もしかしたらこの「メルロー2019」も最初はそのようなとげとげしいワインだったのかもしれない。それが、数年の時を富山の郊外の静かな丘の上の倉庫で眠るように過ごすうちに柔らかく変化。豊かな果実味、穏やかだけどきちんと残る酸味と渋み、そして日本のメルローらしいわずかに漂うピーマンのような香り……と、見事な落ち着きを獲得している。
日本のメルローを熟成させるとこんな味になるのか! という発見に満ちた味わいで、とてもおいしい。
「ときわすれ」という名前は、時を忘れて飲んでしまうおいしさという意味だと思う。しかし実際は、このワインがやまふじぶどう園で過ごした時を、忘れるどころか強く想起させるワインとなっている。
「時間」はワインをおいしくする大切な要素のひとつ。そのことを教えてくれるワインでもあるのだ。
「ときわすれ2019」は、やまふじぶどう園のショップで購入可能です↓
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