ホーライサンワイナリー「イチコロ」をワインブロガーが飲んでみた
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ホーライサンワイナリー「イチコロ」とは
ホーライサンワイナリーの「イチコロ」という名前のワインを飲んだ。「イチコロ」とは「一撃でコロリと倒れる」を縮めた言葉(諸説あり)で、転じて恋愛などで簡単に悩殺されてしまう様子などに用いられるようになったそう。weblio辞書によればもともとは大阪弁だったものが全国に広がっていったとあり、たしかに言われてみると大阪的な切れ味の良い表現な気がする。
そんな言葉を冠した「イチコロ」は、古木のマスカット・ベーリーAと若木のブラッククイーンをブレンドした赤ワイン。今回いただいた2021年ヴィンテージ(収穫)のものが初仕込みだと裏ラベルに書いてあった。現時点では未発売の“裏メニュー”だ。
マスカット・ベーリーAとブラッククイーンの共通点
実はマスカット・ベーリーAとブラッククイーンには共通点がある。どちらも新潟県の岩の原葡萄園で、日本ワイン用ぶどうの父と呼ばれる川上善兵衛氏によって開発されたぶどうだという点だ。
開発年は1927年で、これはホーライサンワイナリーの創業年と奇しくも同じ。岩の原葡萄園は富山県のお隣・新潟県にあり、実は創業当時からホーライサンワイナリーと付き合いがあったようだ。同じ日本海側だけに、富山県は気候風土がマスカット・ベーリーAの栽培に向いていると思われる。ならばブラッククイーンにも同じことが言えるかもしれない。
ホーライサンワイナリー「イチコロ」を飲んでみた
と、お勉強はここまでにしてグラスに注いでみると、まず色合いは濃いめのルビー色をしている。マスカット・ベーリーA単体のワインより明らかに色が濃い。ブラッククイーンはその名の通りに色が濃い品種だと聞くが、それがブレンドされていることが一目瞭然だ。
香りはマスカット・ベーリーAらしい、少しの甘さを感じさせるものだが、よくあるキャンディ的な砂糖菓子のようなものではなく、イチゴやリンゴに梅や紫蘇のような爽やかさが加わった印象。これはホーライサンワイナリーのベーリーAの特徴だ。数年間の瓶熟成を経て、その香りがさらに引き締まっている。
飲んでみてちょっと驚いた。マスカット・ベーリーAは渋みが少なく軽いワインに仕上がりやすい品種だが、ブラッククイーンが加わったことで爽やかな酸味と重みのある渋みが加わっている。他の品種にたとえるのはあまり適切ではないかもしれないけれど、目隠しして飲んだらマスカット・ベーリーAではなく、フランスを代表する品種であるピノ・ノワールやガメイと間違えそうな味わい。軽い果実感のなかに渋みと酸味があって、味わいに深みと奥行きがある。
たとえるならば熟練刑事(古木マスカット・ベーリーA)と若手刑事(若木ブラッククイーン)のバディもの。互いが互いの足りない部分を補って、個性と個性が対立するのではなく調和して1+1の答えを2以上にしている。
ワインの重心は低いけれども非常に飲みやすいので、気がつけばテイスティングの域を超えて飲み進めてしまった。気がつけば1本飲んでコロリと酔ってしまう。なんのことはない、気がつけば私も「イチコロ」にされてしまったのだった。
発売日は未定だが、2025年の早い段階で店頭に並ぶはず。現時点では「裏メニュー」だが、見かけたらぜひチェックしてみてほしいワインだ。
こちらはマスカット・ベーリーAとメルローのブレンドワインについて↓
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